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スウェーデンにインスピレーションC
<<黒崎麻矢>>

スウェーデンの教師と学生、そして学校での授業

スウェーデンでの教師と学生の関係を少し書いてみよう。
私が過ごした国民高等学校での経験では、教師と学生の関係は”平等”であるというのがいちばんの印象だ。日本の教育現場では、教師という教える立場への敬意が重要視されていると感じる。例えば、授業中の質問や、生徒同士で議題について話し合うことが少ない。

スウェーデンは授業の中ではあくまで生徒が主体で、生徒の意見を促し、生徒の意見に耳を傾けながら授業を進めていくのが基本だ。意見を聞かず、一方的に授業を進めていく教師の授業は好まれない。当然、好まれない授業への出席率は減っていく一方になる。
時にはクラス全体で議論が白熱しすぎてしまって、終止がつかなくなってしまうことがある。スウェーデンの教師の役割は、そういう時こそ際立つ。教師は、議論に全体を考え、みんなが納得いく方向へと導いていくのだ。

しかし、クラスは20人ほどの生徒がいる。その各人が持っている考えや意見は、もちろん異なるし、また表現の仕方も千差万別だ。思いついたような意見を述べる生徒、考えながら意見をなかなか言わない生徒、議論、まったく違う方向へ持っていく生徒、など。生徒を主役にしながら、授業を進めて教えることというのはときにはとても困難にも思えた。それでもそうした多様性が基本であって、全体を考慮した上で論議することへの煩わしさのようなものは全く感じられなかった。話し合い、対話が重要視されている教育は、お互いを認めることへの実感へと繋がった。

日本の授業形式で育った私は、初めは言語に対する引け目もあったし、そうした授業への戸惑いも多かったが、グループで少人数で意見を交わす授業をこなすうち、徐々に慣れ、他者の意見を聞き考えること、自分の考えを伝えることが楽しくなっていった。 もちろん、教師やゲストで招かれた人の講義形式の授業もあって、そういった講義中は静かに聞くことが基本で、あとで必ず質問の時間がある。

学期末に一度、教師や授業全体に関してのアンケートがあった。教師一人一人への細かい評価や、不満や改善してほしいことなどへの意見が問われる。私はこうして経験したスウェーデンでの学校の授業によって、全般に人と接する上での態度や物事の考え方が多様に変わったと思う。

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